北野天満宮の「七不思議」

北野天満宮にも七つの不思議がある。
1.影向松/2.筋違いの本殿/3.星欠けの三光門/4.唯一の立ち牛/5.裏の社/6.大黒天の燈篭/7.天狗山である。


影向松

影向松 一の鳥居をくぐると、すぐにあるのが「影向松」
「ようこうのまつ」といい、初雪の日に天神さん(菅公:菅原道真)がこの松に影向(降臨:降り立つこと)して、歌を詠むと古くから伝えられ、毎年、初雪の日(三冬の日:初冬・仲冬・晩冬をいい、陰暦の10・11・12月に当る)に、この大前で初雪祭が行われる。
影向松は、北野七不思議の一つで、古くは北野天満宮に詣でる前に必ずこの松を拝礼してから、本殿に参拝したという。


筋違いの本殿

筋違いの本殿 ここにも、北野の七不思議の一つがあり、普通は楼門を入ると正面に本殿があるのだが、北野天満宮では「筋違いの本殿」と呼ばれ、この楼門の先には本殿ではなく、地主神社があり、本殿は西に偏って建っているのである。
これは、地主神社が道真公を祀る以前の承和3年(836)から、この地に鎮座しており、それを避けて本殿が建てられたために、楼門の正面から外れたものとなったのだと言われている。


星欠けの三光門

三光門 この門が三光と呼ばれるのは、中門にある豊富な彫刻の中に、日・月・星があることからそう呼ばれるとある。
それは、「日」は天満宮の額が掛かる後ろの梁間に、深紅の太陽が、「月」はその対極の梁間に、雲に浮かんだ月があり、この二つは比較的見つけ易いのだが、星の彫刻が見つからない。
星の彫刻を探していると、北側の金網の中にある破風に、二匹のうさぎの中央に三日月の彫刻を見つけたが、星ではなく何処を探しても星らしきものはなく、もともと星は無かったのであり「星欠け門」とも云われ、北野七不思議の一つとされる。
しかし一説によると、雲間に浮かんだ月に見えた彫刻こそが「星」だというのである。昔は現代の星の形ではなく、星も丸い形だったと云う。
したがって、深紅の太陽、うさぎ中央の三日月、そして雲間に浮かぶ丸い星を指して「三光の門」と言うのだともいわれている。

参照:【京都新聞 星の彫刻中門の何処に】より


大黒天の燈篭

大黒天の燈篭 三光門を入る手前の参道には沢山の石燈籠が並んでいる。その仲にも七不思議の一つ「大黒天の燈篭」がある。
この燈篭は、安政2年(1855)に、河原町正面にあった「大黒屋」を中心とする質商組合によって寄進されたもので、台座には大黒さまが刻まれている。
この大黒さまの口あるいは頬に、小石を上手く載せることが出来た石を持ち帰り、財布に入れておくとお金に困らないと伝えられている。


唯一の立ち牛

立ち牛 拝殿の鈴の上、欄間にある牛は、立った牛の姿をしている。
道真公と牛との繋がりは深く、生まれた年が「丑年」であることや、大宰府で亡くなった道真公の御遺骸を、車にのせ牛に引かせて運ぶ途中に、牛が座り込んで動かなくなり、近くの安楽寺に埋葬されたという故事から、
天満宮にある牛はその殆どが臥牛であり、立った姿の牛を見ることはまずといってない。
道真公を祀るどこの天満宮に詣でても、牛の姿は横たわった牛なのである。
ところが、この拝殿の牛は立ち姿の牛であり、唯一ここだけに立った牛を見ることが出来るのだが、何故この牛だけが立ち姿となっているのかは判らないという。
これも北野七不思議の一つとされている。


裏の社

裏の社 拝殿より道真公(天神様)に参拝をし、本殿の裏にまわると、裏の社と呼ばれる「御后三柱(おんこうのみはしら)」を祀る御神座がある。
神社はふつう、というか神社の前面から参拝するのが通常である。
ところが北野天満宮では、本殿の道真公と背中合わせに祀られている祭神があり、本殿の裏にも御神座があり、本殿に参拝した後に、ここにも礼拝をするところから、この神社を裏の社とも呼び、ここも北野七不思議の一つといわれている。
裏の社には、祭神に、天穂日命(あめのほひのみこと:菅公の祖先神)・菅原清公卿(すがわらのきよきみきょう:菅公の祖父)・菅原是善卿(すがわらのこれよし:菅公の父)の三柱の神を祀り、学徳成就にご利益があるという。
清公卿は若くして遣唐使に任ぜられ、空海・最澄や橘逸勢(たちばなのはやなり)らと入唐、その成果をもって、朝廷儀式の改革に努められた。後に菅原氏として初めて公卿に列せられる。
是善卿は、十一歳の時嵯峨天皇の御前で書を読み詩を作られた俊才で、大学頭・勘解由長官等の要職を歴任された後、政治の最高機関である太政官の重職「参議」に列せられた。
両人とも文章(もんじょう)博士(古代の大学で詩文と歴史を教授した教官)を勤め、清公卿は学問所「文章院」を創設、また是善卿は「菅家廊下」なる私塾の充実に力を注ぎ、ともに優れた人材を多数育成されるなど、実践的教育者としておおきな業績を残された。

出典:【御后三柱の説明板】より


天狗山

天狗山 七つめの七不思議は、境内の西北にある「天狗山」という小高い丘である。
室町時代の『社頭古絵図』(北野参拝曼荼羅)には、鳥天狗が描かれていて、その昔この辺りには天狗が住まいしていたのだと云われている。
また、この場所には古くから牛祠が祭られ、一願成就の祠があり人々の信仰を集めたという。


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